(30)  ありあけの  つれなく見えし  別れより 
              暁ばかり  憂きものはなし  (壬生忠岑)

      (歌意)明け方に、月がつれなく残っていた。
          あなたが冷たく見えたあの別れ以来、
          夜明けほど辛く思えるものはありません。

          I hate the cold unfriendly moon,
          That shines at early morn;
          And nothing seems so sad and grey,
          When I am left forlorn,
          As day’s returning dawn.       TADAMINE MIBU



  
この歌の解釈は、「つれなく」していたのは月か、それとも相手の女性かで大きく二つに分かれるようです。「古今集」では女性のもとに行ったのに逢ってもらえず、冷たくされたという解釈だが、定家は「月」説をとっており、女性と会ったあと、後ろ髪を惹かれる思いで別れ、冷たくそっけない月が出ているのを見て、つれなく思ったと解釈してるようです。
後者の方がロマンティックで良いような気がしますが・・・