(24)  このたびは  幣もとりあへず  手向山
      もみじの錦  神のまにまに (菅家)

     (歌意)今度の旅は突然のことで、お供えする幣を用意できておりません。
            とりあえず、手向山の錦の如き紅葉を捧げますので
            神様の御心のままに御受け取りください。

          I bring no prayers on colored silk
          To deck thy shrine to-day,
          But take instead these maple leaves,
          That grow at Tamuke;
          Finer than silk are they.     KWAN-KE

菅家とは菅原道真のことで、学問の神様として有名です。道真は非常に頭が良く、時の天皇宇多天皇にかわいがられた。そして、そう身分の高くない家の出身でありながら、醍醐天皇のときには右大臣にまでなった。このことが藤原氏達は気に入らなくて、藤原時平の陰謀で大宰府に左遷されてしまい、その二年後には亡くなってしまった。道真の死後、京の都では天変地異が後を絶たず、道真を陥れた時平も若くして死に、醍醐天皇の皇太子や、次の皇太子も死亡、さらに、皇居に落雷があり多くの人が亡くなった。すると、人々は、これらの出来事は道真の祟りだと思った。そこで、道真の怨霊を鎮めるために、北野天満宮を建てて彼を祀ることとなったのです。 この歌は宇多天皇のお供として奈良に旅をした時、神に捧げる幣を事前に用意していなかったので、機転を利かせ、モミジで代用しようとした歌です。だが、優秀な道真が幣を忘れてくるとは考えられず、用意した幣よりも美しいモミジの葉をお供えした方が神も喜ばれると思い、その場で差し替えたのではないかとされております。