(29)  心あてに  折らばや折らむ  初霜の
                   
おきまどはせる  白菊の花  (凡河内躬恒)

     (歌意)折るならば、あてずっぽうに折ってみようか。
         初霜が一面に降りたために真っ白になり、
         見分けがつかなくなっている白菊の花を。

         It was a white chrysanthemum
         I came to take away;
         But, which are colored, which are white,
         I’m half afraid to say,
         So thick the frost to-day!     MITSUNE OHSHI-KOHCHI 

日本を代表する歌人、正岡子規は「歌詠みに与ふる書」の中で、この歌を「つまらぬ嘘なるが故につまらぬ」と、貶しているようです。霜が降りて白菊が見えなくなるほど真っ白になり、区別が出来なくなることは有り得ないと言ってるのですが、この歌のように誇張した表現は、「古今集」の頃には好まれていたそうです。 写真は、早朝の冷え切った空気感を表現したかったのですが、これは百首の中で最も苦労した写真です。