(35)  人はいさ 心も知らず ふるさとは  
                     花ぞ昔の 香ににほいける (紀貫之)

              (歌意)貴方はさあ、心変わりしておられるかどうか分かりませんが
         昔馴染みのこの里では、梅の花が昔と変わらずに良い香りを
         漂わせて咲いていますよ。

         The village of my youth is gone,
         New faces meet my gaze;
         But still the blossoms at thy  gate,
         Whose perfume scents the ways,
         Recall my childhood’s days.    TSURAYUKI KI

                           
長谷寺(桜井市)は花のお寺として有名で、「貫之梅」が植えられているが、白い梅が枯れてしまって現在は紅梅になっている。貫之が長谷寺にお参りするたびに泊まっていた宿があり、暫く行かなかったことで、そこの主人に「今も変わらず宿はありますのに」といやみを言われた。それに対して、宿の主人と違って、「ここの梅だけは以前と変わらず咲き匂って、私を迎えてくれているよ」と素直に歓迎してくれてると詠んだのです。写真から梅の香りを感じ取ってください。