(49) みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え
    昼は消えつつ 物をこそ思へ (大中臣能宣朝臣)
        
       (歌意)宮中の門を警護する衛士の焚く篝火が
           夜は燃え、昼間は消えてるように私の思いも夜は激しく燃え、
           昼は消え入りそうに物思いに沈んでいるよ。

           My constancy to her I love
           I never will forsake;
           As surely as the Palace Guards
           Each night their watch-fire make
           And guard it till daybreak.
                 THE MINISTER YOSHINOBU,OF PRIESTLY RANK 

宮廷を守る衛士(今で言うところのガードマン)が、昼間も夜も一日中相手を想う歌です。燃え上がる炎で情熱を表現しています。

参考にしているPHP文庫・吉海直人氏監修の「こんなに面白かった百人一首」では、『更級日記』の中に、衛士と姫君のラブストーリーが書かれているとしています。それをそのまま引用すると、武蔵国から衛士としてやって来た男が「郷里に帰りたいなぁ」と愚痴を吐いていたところ、帝の姫君がこれを聞いていた。そして「私をお前の故郷へ連れて行っておくれ」という。男は恐ろしく思いつつも、ついに姫君を故郷に連れ去った。ところが、姫君のお香で足がつき、すぐ追手に見つかってしまう。しかし姫君は「帰らない」の一点張り。困った帝はとうとう折れて、姫君と男に武蔵野を預け、立派な屋敷を建てて住まわせたという。 よほどカッコいい衛士だったのかな? しかし、呟いて見るものですねぇ。