(65) 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ (相模)
恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ (相模)
(歌意)あなたを恨み悲しんで
涙で乾く間もない袖でさえ朽ちそうなのに
恋の浮名のために、私の評判まで廃れてしまうのは、
とても惜しまれる。
Be not displeased. but pardon me,
If still my tears o’erflow;
My lover’s gone, and my good name,
Which once I valued so,
I fear must also go. SAGAMI
一条天皇の皇女・脩士内親王に仕えた作者は、相模守と結婚したため相模という女房名で呼ばれた。写真は、涙を雨で表現していますが、激しい雨に打たれて耐えている椿の花と、浮名のために朽ちてしまいそうな作者の気持ちを対比させています。
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(66) もろともに あはれと思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし (前大僧正行尊)
(歌意)お互いに「懐かしい」と思っておくれ山桜よ。
桜の花のお前より他に、
私の心を本当に知ってくれる者はいないのだから。
In lonely solitude I dwell,
No human face I see;
And so we two must sympathize.
Oh mountain cherry tree;
I have no friend but thee. THE ARCHBISHOP GYHOSON
大峰山麓の奥吉野から眺めた山々
行尊が修験道の聖地といわれる大峰山で、修行中に出会った桜に愛おしさを感じて詠んだ歌です。 写真は厳しい山中に咲く山桜の孤独感と、作者が孤独に耐えて修行に励んでいる姿を重ねて表現しました。