(67) 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
      かひなく立たむ 名こそ惜しけれ (周防内侍)

        (歌意)春の夜の夢のような、かりそめの腕枕のために
            つまらなく立ってしまう浮き名が、
            なんとも口惜しいことです。

         If I had made thy proffered arm
         A pillow for my head
         For but the moment’s time, in which
         A summer’s dream had fled,
         What would the world have said?   THE LADY-IN-WAITING SWO

「春の夜の夢」は、はかないものをさす言葉としてよく使われます。また、この歌の「かひなく」は「甲斐なく」と「かひな」(腕のこと)が掛けられています。ある夜、周防内侍たちが宮中でおしゃべりをしていたとき、眠くなったので、「枕があればいいのに」とつぶやいた。これを聞いた大納言忠家が「これを枕に・・」と腕(かいな)を御簾の下から差し入れた。そこで周防内侍はこの歌を返し、やんわりと断ったそうです。写真の御簾は、すだれ資料館(大阪府河内長野市)で撮影。