(89) 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞする(式子内親王)
忍ぶることの 弱りもぞする(式子内親王)
(歌意)私の命よ、絶えてしまうなら絶えてしまえ。
もし、生きながらえていると
この恋を忍ぶことができなくなり、
人に知られてしまうかもしれないから。
The ailments of advancing years
Though I should try to hide,
Some day the thread will break, the pearls
Be scattered far and wide;
Age cannot be defied. PRINCESS SHOKUSHI
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(90) 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
ぬれにぞぬれし 色はかはらず(殷富門院大輔)
(歌意)私の袖をお見せしたいものです。
雄島の漁師の袖でさえ濡れたとしても色は変わらないのに。
(私の袖は涙でこのように変わりました)
The fisher’s clothes,though cheap, withstand
The drenching they receive:
But see! my floods of tears have blurred
The colors of my sleeve,
As for thy love I grieve.
THE CHIEF VICE-OFFICIAL IN ATTENDANCE
ON THE DOWAGER EMPRESS IMPU
血の涙で色が変わってしまった私の袖を、あの人に見せたいものです。と「血の涙」という少しオーバーな表現で恋のつらさを歌っています。この歌の「あま」は海人、つまり漁師のことで、その漁師が漁をしているときに、袖を濡らしてしまう様子を言っています。血の涙で色が変わってしまった袖のことを、雄島(宮城県の松島)の空の色が染まっていくことで表現しました。