(91) きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき ひとりかも寝む(後京極摂政前太政大臣)
衣かたしき ひとりかも寝む(後京極摂政前太政大臣)
(歌意)コオロギの鳴く霜の降りる寒い夜、
筵の上で私は自分の片側の袖を敷き、
ただ独りわびしく寝るのだろうか。
I’m sleeping all alone, and hear
The crickets round my head;
So cold and frosty is the night,
That I across the bed
My koromo have spread.
THE REGENT AND FORMER PRIME MINISTER
GO-KYOGOKU
着物は大門坂茶屋(那智勝浦町)で撮影したものです。
この歌の「きりぎりす 」は、今でいうコオロギのことで、気温が下がるにつれて暖かい場所を求め、床下などに移動するそうです。 後京極摂政前太政大臣こと九条良経は、二十六歳で右大臣になったエリートだが、三十八歳で生涯を閉じたそうです。さらに、この歌を詠む少し前に妻を亡くしていたそうです。床下のコオロギの鳴く声が響く中での、一人寝の寂しさがひしひしと伝わってきます。