(99) 人もをし 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに 物思ふ身は (後鳥羽院)
世を思ふゆゑに 物思ふ身は (後鳥羽院)
(歌意)人が愛おしかったり、憎らしくも思える。
どうすることもままならないこの世を思うゆえに、
あれこれと思い悩む、わたしは。
How I regret my fallen friends
How I despise my foes!
And, tired of life, I only seek
To reach my long day’s close,
And gain at last repose.
THE RETIRED EMPEROR GOTOBA
あるときは人が愛しく思えたり、あるときは憎らしくなる。激動の時代の中にあって、後鳥羽院がこの世を苦々しく想う気持ちを歌っています。年々幕府との対立が深まり、後鳥羽上皇(後鳥羽院)は、挙兵するも敗れ(承久の乱)、隠岐島に流されその地で没した。写真は、その時々によって憎らしく思えたり、また愛おしくも思える二面性を、美しさと不吉さの二面性を持つ曼珠沙華(彼岸花)で表現しています。
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(100) ももしきや 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり (順徳院)
なほあまりある 昔なりけり (順徳院)
(歌意)宮中の古びた軒端に生えている忍草を見ると
やはり、偲んでも偲びきれないのは
栄えていた昔のことであるよ。
My ancient Palace I regret,
Though rot attacks the eaves,
And o’er the roof the creeping vine
Spreads out and interweaves
Unpruned its straggling leaves.
THE RETIRED EMPEROR JUNTOKU