(27)  みかの原  わきて流るる  いづみ川 
     いつ見きとてか  恋しかるらむ (中納言兼輔)

      (歌意)みかの原から湧き出て流れる泉川の名のように
          いつ見たということで、あなたがこんなに恋しいのだろうか。

          Oh! rippling River Izumi,
          That flows through Mika plain,
          Why should the maid I saw but now
          And soon shall see again 
          Torment my love-sick brain?  
                 THE IMPERIAL ADVISER KANESUKE

木津川(京都府)
みかの原は、聖武天皇が740年に平城京から遷都した恭仁京が置かれた場所。いづみ川は京都府南部を流れる木津川のことで、歌は、うねりながら水量を増していく川と、こんこんと湧き出て高まっていく恋心とを重ねて詠んでいます。だが、下の句で「いつ見たということで、こんなにも恋しいのだろうか」と詠んでいるので、逢ったこともない人への想いのようです。貴族達は、噂だけで恋をするらしいです。 写真の場所は、大型ダンプや運送車が行き交う狭い国道脇で命懸けの撮影でした。

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 (28)  山里は   冬ぞさびしさ   まさりける
     人目も草も  かれぬと思へば    (源 宗于朝臣)

     (歌意)山里は冬になると、寂しさがいっそう優って感じられる。
         人の往き来も途絶えてしまい、草木も枯れてしまうと思うと。

        The mountain village solitude
        In winter time I dread;
        It seems as if, when friends are gone,
        And trees their leaves have shed,
        All men and plants are dead.   
               THE MINISTER MUNEYUKI MINAMOTO

飛騨地方の雪景
山里はいつも寂しく感じるものですが、冬はことさら寂しさが身に沁みます。作者の源宗于は、天皇の孫でありながら出世が思うようにいかず、侘しい自分の身と、冬には訪れる人がいなくなる山里の侘しさを重ねて詠んだ歌です。