(40) 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は
      ものや思ふと 人の問ふまで(平 兼盛)

       (歌意)私の恋心を隠していたけれど、
           とうとう堪えきれずに顔色に表れてしまった。
           恋に悩んでいるのかと、人に尋ねられるほどに。

           Alas! the blush upon my cheek,
           Conceal it as I may,
           Proclaims to all that I’m in love,
           Till people smile and say—
           ‘Where are thy thoughts to-day?’     KANEMORI TAIRA    

 
村上天皇が主催の恋を題材にした歌合のときに平 兼盛が詠んだ歌で、抑え切れずに溢れ出た想いを歌っています。中学生ぐらいの年頃でクラスメートの子に密かに恋心を抱いていたのを、友人に指摘され、隠しきれずに出てしまった想いのようなものを、モミジの色づきで表現しました。

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   (41)   恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
       人知れずこそ 思ひそめしか(壬生只見)

      (歌意)恋をしているという私の噂が早くも立ってしまった。
          誰にも知られないようにひっそりと思い始めたばかりだったのに。

          Our courtship, that we tried to hide,
          Misleading is to none;
          And yet how could the neighbors guess,
          That I had yet begun
          To fancy any one?           TADAMI MIBU


第40首の平兼盛と歌合せで勝負した一首だが、この歌を詠んだ壬生只見が負けてしまった。どちらも優れた歌で、なかなか勝敗が決まらなかったが、村上天皇が兼盛の歌を小さく口ずさんだため、平 兼盛の歌の勝利と見なされたそうです。写真は、伏せている貝と表にした貝とで、隠している思いを表現しました。